音楽番組をチラッと観たら、懐かしい曲が流れてきた。歌っているそのひとが若い頃にリリースした曲は色褪せることなくまだ響いてくるものがある。
ふと、このひとはだいぶ歳を重ねたなと感じた。それと同じだけ私も歳を重ねている。
こどもの頃、家族で音楽番組を観ているとき、おじさんが歌っている曲はちょっぴり退屈だった。私は流行の曲を聴きたいのに、なんでこんなおじさんが歌っている曲を流すのかなどと、今となっては失礼極まりないことを思っていた。だが、親はとても楽しそうにおじさんが歌っている場面を眺めていた。
おじさんを眺めるだけではなく、何か遠くの記憶を引っ張り出してきたような顔をして眺めていた。
きっと、今の私はあの頃の親と同じ表情をしている。
経験値を積み重ねれば何者かになれる、とは言わないが、何者かに近づけると思っていた。けれど、自分では何が変わったのかよくわからない。
あの頃好きだった曲も景色も感触も感情も、まだどこかに残っていて、自分は何も変わっていないように思う。
変化を内側から感じるのは余程のことをしなければ難しいのかもしれない。
録音した自分の声が違和感なく聞ける日と変化を感じられる日はどちらが早くやってくるのだろうか。