玄関を出て外のひんやりした空気を感じるとき。
外から建物の中へ入ったとき。
温度の差に体がビクッとする。
ビクッとした体はやがてその場に馴染み、何事もなかったかのようにまた動き始める。
私が波だとして、まっすぐに浜辺に向かって進んでいく。浜を静かに濡らし、また浜から遠ざかっていく。
あなたがその次にやってきた波だとして、まっすぐに浜辺に向かって進んでいく。浜を静かに濡らし、また浜から遠ざかっていく。
浜に寄せたとき、私は空気を含み、体の一部を白く染めた。あなたも空気を含み、体の一部を白く染めた。
長い時間、一定の距離を保っていた波は体の一部を白く染めたとき、はじめて混ざり合った。
いつもそんなことを考えている。混ざり合うときを感じたいがために生きているような気もする。
私がここにいるのは、私だけでは生み出せないものをあなたと混ざり合うことで生み出すこと。
はじめてのひとと会話をするときも、そんなことを考えていたりする。
日が落ちてから街灯のない道を歩く。
私の存在に気づかない車がスピードを出してカーブを曲がろうとする。慌てて存在をアピールする。
いつもそんなふうに生きている。