窓を開けると部屋の中と外の区切りがなく、どこまでもつづく広いひとつの空間のような気がする。
そこはわたしだけのものではなく、そしてあなただけのものでもない。
だれのものでもない場所にわたしは少しだけ身を置き、呼吸をし、体を動かしている。
広大な空間のなかのひとつであり、ひとりであることを自覚すると、自分だけではなく周りもだんだん見えてくる。
それが見えないのであれば、まだイメージが定まっていないのかもしれない。
深呼吸をして目を瞑って体を横たえておやすみなさい。
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手作りのコロッケが無性に食べたくなったのでコロッケを作った。じゃがいもがほんのり甘い定番のコロッケは揚げたてを食べるにかぎる。あつあつのコロッケを箸で持ち上げ、歯を衣に立てるとサクッと音がしたあとほわほわとしたじゃがいもと挽肉の旨味、玉ねぎの甘さがいっぺんにやってきて「はふはふ……おいひい」と声に出していた。自分で作ったコロッケを食べて泣きそうになったのはそれほど疲れていたのかもしれない。