昨日、お祭りの思い出 - バンビのあくび を書いたのはコレを読んだからです。
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/07/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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宵山のお祭りをめぐる群像劇。
それぞれのお話だけでも楽しめるけど、繋ぎあった糸を手繰るうちにどんどん引き込まれていく。
何より細かい描写が美しい。
このお話にあるような不思議な出来事はファンタジーのように捉えられるのかもしれないが、実は忘れていたり記憶から消えただけで幼い頃の自分にも起きていたのではなかろうか?と思う時がある。
何でも物事は対になっていて「夢」と「現実」は実は紙一重な存在であるのではないか?だとすれば大きな風でも吹いたらクルッとひっくり返り、幻想の世界に迷い込む。
そんな風に私は思っているのだ。
話の中で「招き猫と信楽焼の狸が並んでいる」という場面がある。
先日、近所の家…約20件ぐらいに集金に行くことがあった。平日は仕事で家にいないこともあり、まともに近所の方々を把握していなかったので良い機会だった。
この辺りの家は昔ながらの家が多く、どの家もとても立派。玄関のドアを開けると4畳ぐらいのスペースがあり、掛軸や置物、お花が飾られているような家が少なくない。
そんな中で招き猫と信楽焼の狸にはたくさんお目にかかった。そう言えばウチの玄関先にも狸がいる。こういったモノに時代はないと思うのだけれど、どうしても昭和なニオイと懐かしさを感じてしまう。
「招き猫と信楽焼の狸が並んでいる」の表現はこれと同じで懐かしさをほんのりと感じた。
タイトルにもある『万華鏡』が読み進めるうちに少しずつ入り込んできて、なるほどなるほど〜と思いながら読んでいた。
万華鏡というものは本当に幻想を映し出す道具だと思う。覗くと知らぬ間に時が過ぎて行く。私は明るい所に向けて覗くほうがキラキラしていて好きだ。
昔、表参道から少し入ったところにカレイドスコープをたくさん置いているお店があった。今もあるのかどうかは知らない。良く考えてみるとお店の名前も知らない。私がその辺りを歩く時は大抵「クレヨンハウス」に絵本を買いに行く時なのだが、ついでにそのお店に立ち寄ることが多々あった。
色々な種類のカレイドスコープがあったので手にとっては眺めて、また手にとっては眺めて…と飽きることなく繰り返した。液体が動くタイプのものは特に幻想的に見えた覚えがある。
お店を後にする頃には心地良さとともに、気持ちが少しスッキリとしたものだ。
この本を読み終えた時、あの頃の気持ちを思い出した。
『万華鏡』が私を違う世界へ誘ってくれたので、一旅終えた気分である。
さて、明日からまた頑張りますか〜。