皆様、こんにちは。
絵本好きな皆様こんにちは。
絵本好きじゃなくてもこんにちは。
先日、「雨の日が楽しくなる絵本」という記事を書いたのですが、その際にけいろーさん(id:ornith)がこのようなコメントを下さいました。
ornith “文字のない絵本”の存在をすっかり忘れていた!チビッコの頃、なぜだか妙に惹かれて繰り返し読んでいたような覚えがあります。内容もタイトルも忘れちゃったけど……。
これはおそらく「かさ」という絵本を紹介したため、思い出されたことなのだと思います。
私はその時「これは『文字のない絵本』特集をしたら面白いんじゃないかな」とピン!と髪の毛が跳ねたのです。
ってなことで、『文字のない絵本』を読み漁っていくつかピックアップしました。興味のある方もない方も見て下さると嬉しいです。文字はなくとも、感動するし笑いもします。そんなことを伝えられたら…と考えています。
ではどうぞ☆
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『ぞうのボタン』
ぞうがいます。おなかにボタンを4つつけています。
このボタンはなんだろう?と、はずしてみるとなんと中から動物が現れたのです。その動物にもまたボタンがついていて・・・マトリョーシカのように中から続々と動物が現れるお話です。
着ぐるみを脱いで行くような感覚に、「次は何がでてくるのかな?」と期待しながらついついページをめくってしまいます。文字は1つもありませんので、語りかけの言葉を添えても、ただゆっくりとめくってあげるだけでも楽しめそうです。
はじめて読んだ時、「とっても面白いな~」と思い、読み終えてからすぐにもう一度読みました。絵のタッチでわかる方もいらっしゃると思いますが、「ねずみくんのチョッキ」の作者さんの絵本です。
『えんにち』
この絵本は屋台を組み立てるところから始まります。屋台が組みあがり、皆が楽しそうにお祭りに来ている風景が何ページにもわたって描かれています。文字は一番最初のページに数行あるだけで、あとはひとつもありません。
私が子どもの頃大好きだった絵本なのですが、この絵本を読んで自分が行ったお祭りを思い出したり、また次にやってくるお祭りを楽しみにしたりしていました。
おめん、綿菓子、金魚すくい・・華やかな、それでいて終わった後は少しだけ切なくなるようなお祭りの風景を感じ取れると思います。
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えんにち [こどものともセレクション] (こどものとも傑作集)
- 作者: 五十嵐豊子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1977/04/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 3回
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『やこうれっしゃ』
夜行列車の出発から到着までの駅や車内の様子を細かく描いている絵本です。
今は少なくなった夜行列車、寝台車の様子が見られてワクワクします。随所に懐かしい昭和な風景があり、久しぶりに読んだら端までじっくり読み、楽しんでいる私がいました。
ただ淡々と乗客を描いているだけなのに、なぜだか楽しい。人の声や列車の音さえ聞こえてきそうな気がしました。
文字がなくとも十分楽しめる素敵な絵本です。
『おふろやさん』
『やこうれっしゃ』と同じ、西村繁男さんの絵本です。
「これから、あっちゃんは、おとうさんと おかあさんと あかちゃんといっしょに おふろやさんにでかけます。」
一番最初にこの文章がありますが、あとは文字がありません。
家族でお風呂屋さんを楽しむ風景や友達同士でふざけ合い、大人に叱られているところなどクスッと笑いながらも微笑ましい気持ち眺めてしまいます。隅々まで眺めていたら、刺青をいれた方もいらっしゃったのでそんな時代だったのかなと思いました。
あたたかい空気で包まれた優しい雰囲気が出ている絵本です。
『かさ』
墨一色で描かれた絵の中で、女の子の「あかいかさ」のみが色づいており、目を惹き付けられます。
「あかいかさ」をさした女の子は何処へ向かうのでしょう。
ページをめくる度にあかいかさの行方を目で追いかけ、女の子がお父さんのおむかえへ行くことを知ります。おそらく夕方の時間帯。文字がないことで雑音が感じられず、また、女の子が「おむかえ」という任務を果たす責任感も伝わってくるようです。
初版は1975年。40年前の風景は今でも色あせないのです。(車の絵には時代がでますけどね)
先日書いたこちらの記事でも紹介していますので、同じ文章を載せました。
私が好きな『雨の日が楽しくなる絵本』をご紹介します☆ - バンビのあくび
『マットくんのふねふねヤッホイ!』
マットくんシリーズは全4作あるのですが、こちらと「マットくんのきょうりゅうだ!」の2冊が文字のない絵本になっています。
青いじゅうたんを海に見立てたり、ソファや布団が船だったり。マットくんの空想の世界は広がっていきます。左ページが現実で、右ページが空想の世界になっているのですが、比較しながら読むと子どもの思考がわかるようでとっても楽しいです。掃除機をあるものに見立てるのですが、そこがこの絵本の中で一番面白いと思います。
『ねこさんびき』
この絵本、タイトルも表紙の感じもシンプルなので「ゆったりした絵本かな?」と勝手に想像した私は浅はかでした。
ねこがさんびき木の上におりまして、水の中にいる魚を狙っているお話。
とても面白いです。文字がなくてもアハハと笑えます。躍動感があり、「そうきたか!」と思わせるラストにやられました。言葉がなくとも十分笑いはとれるものですね。ぜひ、読んでみてほしいです。
『はるにれ』
写真絵本です。
雄大な大地に立った「はるにれ」の木の四季を映し出しています。
とても美しいです。それ以外に言葉が見つかりません。
はるにれの力強さと、そこから見える四季折々の景色。
眩しい光と、雪化粧の中にひんやり佇んでいる様。
こどもが読んで何を感じ取るか計り知れません。写真のため、つまらなそうにただ眺めているだけの子もいると思います。それはそれで良いのだと私は考えています。
もう少し大きくなった頃に開いて何かを感じ取るかも知れませんしね。
『ふしぎなさーかす』
真夜中の12時。
『ふしぎなさーかす』という絵本から飛び出してきたピエロや小人たちが繰り広げる面白くてどこかふしぎなさーかすが体験できます。
「これはどうなってるのかな?」と考えながら、話しながら、読み進めると違った景色が見えてくるかも知れません。
安野さんは文字のない絵本をたくさん描かれているのですが、このシリーズ?では「ふしぎなえ」もおすすめです。
この絵本はこちらで購入しました。
神保町にある児童書専門古書店『みわ書房』で絵本を購入しました - バンビのあくび
『蚤の市』
『ふしぎなさーかす』と同じ安野光雅さんの絵本です。冒頭に文章はありますが、あとは文字がありません。この絵本はフランス映画、ルネ・クレール監督「リラの門」の一場面がモデルとなっています。
古くなったものばかりが売っている蚤の市の風景。ページいっぱいにモノとヒトがあふれかえっています。中には童話の主人公達もちらほらと紛れています。絵のタッチと淡い色彩により細かい書き込みもうるさくなく、温かな空気が流れていることが伝わってきます。
ずっと眺めていたいと思える絵本です。
『小さな池』
「小さな池が見えますか?」
そんな問いかけでこの絵本は始まります。あとは文字がありません。空の高いところから地上を見下ろすと、ずっと下のほうに青白く光っている小さな丸いものがあります。クローズアップされるとそれが「小さな池」だとわかります。池は様々な顔を見せます。太陽が光り、さざなみができ、魚の影が見え、葉っぱが水面を漂っています。雨粒が落ち、広がる波紋…。
池を舞台に季節や風景、空気を感じ取ることができ、なぜだかグッと胸を掴まさる一瞬があるような絵本です。
『あかいふうせん』
あかいふうせんがすこしずつ変化していく素敵な絵本です。線と赤で表現されるシンプルな作りながら想像力をかき立てられます。
アートという観点からみてもとても優れているので、何度眺めても飽きがきません。こどもの反応は分かれるかも知れませんが、大人が読んでも十分楽しめます。
イエラ・マリは「りんごとちょう」もおすすめですので、合わせて読んでみて下さい。
『にわとりとたまご』
こちらもイエラ・マリの作品です。今年、再販されました。
にわとりの足をクローズアップしていて視点の低さが楽しめる絵本です。
足の付け根に生えている羽根の変化で時間の経過がわかり、また卵の成長具合からも察することができるのが素晴らしいです。途中、足のクローズアップ、卵とページに交互に描かれていて、これは映画でいうところのカットバックという手法を使っているようです。
「言葉はなくとも伝わる」ではなく、ことばがないことで成功している本だと感じました。
『ZOOM』『RE-ZOOM』
ズーム、リズーム、どちらも最初の絵からズームアウトしていく絵本です。
例えば腕時計。コレをどんな人がしているのか次のページでわかり、また次のページではその人がどんな場所にいるのかがわかる…といった少しずつ判明していくストーリーにワクワクしながらついつページをめくってしまいます。
全部読み終わったら、次は後ろのページから読みましょう。だんだんズームされていくのもまた面白いのです。

- 作者: イシュトバンバンニャイ,Istvan Banyai
- 出版社/メーカー: ブッキング
- 発売日: 2005/04/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 23回
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『セクター7』
エンパイアステートビルに登った少年が雲のこどもに会い、雲の製造工場に連れて行ってもらうという夢の溢れた作品です。
細かなコマ割りにより、言葉がなくとも、迷わずストーリーを追って行くことが出来ます。私もセクター7に行きたい!と思わず叫んでしまいたいくらいかわいいお話なんです。
ウィズナーは『かようびのよる』や『漂流物』もおすすめです。
『アンジュール』
説明不要なほど有名な絵本です。
走行中の車から捨てられた犬のお話。デッサンで描かれただけなのに、犬の表情や佇まいから伝わってくるものがたくさんあり、胸が締め付けられる気がします。ラストでポッと小さな明かりが灯ってような気分になりました。
目まぐるしく変わる自分の感情の変化に驚き、「私って生きてるんだな」とあらためて感じた本でした。
『アライバル』
ストーリー性のあるとても美しい絵本です。
こどもにこの世界を理解するのは少々難しいので大人向けだと思います。
新たな土地に移民した者が成長していくお話。様々な場面がセピア色で細かく表現されており、サイレントムービーを観ているかのような気持ちにさせられます。
独特の世界観があるので、どっぷり浸かる方と微妙かも…という方に分かれるような気もします。絵は間違いなく素敵です。時間をかけてゆっくり眺めているだけでも良いかも知れません。
『みつけた!』
駒形克己さんの絵本です。
一番最後に一言だけことばがあるのですが、あとはひとつもありません。
トレーシングペーパーに描かれた植物や虫達。トレーシングペーパーの「透ける」という特性を生かし、少しだけ見えた次ページに期待が膨らみます。駒形さんの絵本は表現方法はシンプルですが、紙質を生かした絵本が多く、私は大好きで中学生の頃から集め続けています。
また、 文字のない絵本と少し離れてしまいますが、トレーシングペーパーを使用した絵本では新宮晋さん(文字のない絵本『小さな池』の作者)の『くも』とブルーノ・ムナーリの『きりのなかのサーカス』はお気に入りです。こちらも合わせて読んでみて下さい☆

- 作者: ブルーノムナーリ,Bruno Munari,谷川俊太郎
- 出版社/メーカー: フレーベル館
- 発売日: 2009/09
- メディア: 大型本
- クリック: 11回
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「文字のない絵本」は感性が磨かれるということで、おすすめしているサイトをみかけます。もちろん、そんな一面も多分にあると思います。
ただ、これらの絵本は通常あるような文字と絵で表現された絵本を読み、その間に挟み込むことで魅力が上がるように感じます。想像することは素晴らしいのですが、それだけでは疲れてしまいます。私も数日の間にココにあげた本を全て読んだのですが、正直なところだいぶ疲れました。
文字と絵のバランスを理解した上で、文字がなくとも表現出来る素晴らしさや、そこから感じ取れる能力をほんの少し養えればそれで良いのではないかと思います。
そんな位置付けで『文字のない絵本』を楽しんでもらえたら、私はとっても嬉しいのです。
デザイン的に優れた絵本は、何気なく眺めただけでも伝わることがあるので、ぼんやり眺めるだけも良いかも知れません☆