バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

季節が変わるように

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ゆずが「夏色」で歌っていたようなゆっくりゆっくり下って行く坂が見当たらない関東平野のど真ん中で育った私は長い坂をみると少しだけテンションがあがる。おそらく自転車であったなら長い坂の下でため息のひとつも出ると思うが、車なのでハイテンションになるばかりである。

長い坂は登っているときにてっぺんしか見えないのが良い。下りが見えないため、道がそこで途絶えているような気がして「もしかしてこのまま空につっこんで飛べるのではないだろうか」とジャンプ台に立ったジャンパー気分になれるのが良い。ジャンプ台に立ったことはないので、本当のところはわからないけど、きっとそうだと思ってる。

坂のてっぺんというより、空を目指して進んだ車は、てっぺんにたどり着くとそこから長い下り坂に入って行く。まるでジェットコースターに乗っているかのような気分になるのでスピードを抑えつつ、「うひょー」「うひゃー」などと声を出しながら運転するのが楽しい。私がジェットコースターに乗ったときはにやにやしっぱなしでいるか口を大きく開けてガハガハ笑っているため、よだれは出るが「キャー!!」なんて声を出したことはなく可愛らしさの欠片もない。本当に楽しいときって可愛らしさに気は回らないもんじゃないかと思っていたりもする。

長い坂はただ通り過ぎただけでも気分が変わるときがあって、私はそれを味わいたいがために坂がある道をあえて選ぶことがある。街中にあるただ、それだけのコト、モノがスイッチになることは往々にしてあるのだ。

 

こないだ、夜に車を運転している際に長い坂を通ることになった。長い坂は大好きなはずだったのに、夜の運転はとっても怖かった。街灯がほとんどなく、車のライトが照らし出すだけの坂を上っていると、そのまま闇に飲まれて消えてしまうような気がしたのだ。下り坂でもそのまま地の中へ進んでいってしまうような怖さがあった。

闇夜はこわい。周りが見えないってこわい。

だが、そこで「大丈夫。道は続いているから」という声を聞いて少しだけ現実に引き戻された。不安なときに声をかけられるとそれだけでだいぶ助かるんだなって思えた。そんなこと当たり前だし、知っていたけれど、身をもって体験することであらためてそう感じたのだ。

 

最近、ぽろぽろと涙が落ちてくることがある。

悲しみや寂しさや虚しさだけじゃなくて、優しさに触れたときも同じようにぽろぽろ涙が溢れてくる。心の中は目まぐるしく動いているのに、外に出るのは同じように頬を伝う涙だけなんだなって思うと不思議な気がしてくる。そしてふぅっと息を吐く。

闇夜にいるときはじたばたするもんじゃないなって思う。

 

野にはタンポポオオイヌノフグリも咲いていて、土筆がたくさん生えていた。

季節が変わるようにまた、ゆっくりと心も動く。

大丈夫。

わたしは元気です。