目の前にしっぽが落ちていた。
しろとくろの縞模様のしっぽは右に左に振り子のように規則正しく動いている。
これは、遊んで下さいの合図なのではないかと思い、恐る恐る手を伸ばしてしっぽの先に触れようとした。だが、私が右に手をやるとしっぽは左に動き、左に手をやると今度は右に動いた。
これはもしかしたら、しっぽが遊んで下さいと言っているのではなく、私が遊ばれているのではないか。
遊んでいるようで遊ばれて
遊ばれているようで遊んでいる。
とんとん。
縞模様のしっぽは上下に動いて床を叩いた。
とととん。
何としてもしっぽに触りたいと手を伸ばしてみるものの、やはりしっぽに触れることはできなかった。
ととととん。
自由気ままなしっぽは上下に楽しそうに揺れながら少しずつ私から遠ざかっていった。
***
幼い頃、しっぽとりのような遊びで負けることがなかった。私は足が速かったのだ。瞬発力もあり、機敏に向きを変えるため、私のしっぽはいつも私の後ろに引っついていて、誰の手に渡ることもなかった。
それは嬉しくて誇らしくて、ほんの少しさびしいことであった。