バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

パンの香り

太陽の光が、頭のてっぺんにふりそそいで来るのを感じながら、パン屋さんへ向かった。ドアを明け、トングを持ち、棚に2段に並べられたパンの中から、私の手が選ぶパンを探す。甘いパンとしょっぱいパンを1つずつトレイに乗せたあと、「焼きたて」の文字に誘われたのか、私の手は、もう1つパンをつかんでいた。

お会計を済ませ、外へ出た。軽く跳ねながら外へ出たためか、買い物バッグからパンの香りが漂ってきた。明らかに私を誘ってくる香りに負け、何処かで食べようと思った。考えながら10mほど歩を進めると、住宅地の一角に小さな公園が見えてきた。低い生け垣越しに公園を覗くと、ベンチらしき椅子があったので、ここで食べることにした。一緒に飲み物も欲しかったので、近くのコンビニへ向かった。コンビニのドアが開くと、よく知っている顔がこちらを見ていた。友人だった。友人は珈琲を入れているところだったので、「焼きたてパンをあげるから話に付き合ってよ」と家来を探す桃太郎になった気分で話しかけた。友人はすでにコンビニでパンを購入していたので、焼きたてパンは辞退されたが、パン屋の場所を教えるという名目の元、公園へ連れていった。公園のベンチに腰かけると、急に喉が乾いてきたので、先ほどコンビニで購入したジャスミン茶をあけ、喉を鳴らすようにして飲んだ。乾いた口と喉が潤されると、私の口も滑らかになったようで、とりとめもない話を延々、友人に話して聞かせていた。最近の出来事、家族のこと、面白かった映画、とにかく思いつくかぎりの、私が誰かと話したかったことばが、次々と口から飛び出していた。頭で考えるよりも先に口が動いていたので、私の口は別のいきものなのではないかと思ったくらいだった。友人はひたすら相槌を打ち、聞き役に徹してくれた。私の口は溜めていたことば達を外に出せて軽やかにスキップをしているようだった。

中学生くらいの2人組が自転車で公園を横切った。そういえば何分ぐらい経ったのだろう。時間を見ると30分くらいは話続けていたようだった。そろそろ行きましょうかと立ち上がり、公園を出ると先ほどの2人組が不思議そうな顔でこちらを見ていた。

2人で歩いているとき、そういえば、焼きたてパンを食べていなかったなと思った。手に持った買い物バッグを覗くと中からパンの良い香りがした。