朝の忙しい空気が漂う街のなかで
私が通り抜けられる道をさがしている
針の穴ほど小さくはなく
ドーナツの穴ほど大きくはなく
ただ私の気配だけが通り抜けられる
誰の目にも止まらない道を
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仕事が忙しく、帰宅後夕食を作り、お風呂に入るとすぐに寝るような時間になっている。皆が楽しそうにしているのが羨ましくもあり、心を同じ位置まで持っていけないであろう自分を確認する。暗くなっているわけでは決してなく、ただひとりの時間が今は欲しいだけだ。
家を出た息子が使用していた部屋を半分くらい片付けたので、私はその部屋で寝ることにした。ここ数年感じたことがないくらい深い眠りについたようで、目覚めが心地よかった。
私はどうやら隣に誰かが眠っていると落ち着いて眠れないようだ。修学旅行に始まり、最近では会社のイベントで宿泊した際に同室だった方がいてほとんど眠らずに夜を明かした。幼い頃は兄が所属していた少年野球の応援に行き、何処かの小学校の体育館横で眠ったり、通っていた教会の長椅子で眠ったりしていたのにどの段階で変わってしまったのだろう。おそらく、わたしとあなたの境界線に気がつきはじめ、自身の姿を他人にむやみに見せることが怖くなってからだろう。人の目を気にするというより、一定の距離より近づくのが怖いのだと思う。心を許しても傷つけられることが待っているなら近づきたくない。それくらいの傷を負い、今はできるだけ見ないようにしている。
「見ないようにする」という点において、シンプルに多忙であることはちょうどいい。懐事情も心配ではあるし、たいして稼いでもいないのに固定支出を増やすような行為をしているので、頑張って労働しようと思う。周りを見ていても始まらないし、私の生活は私が築いていくものであるのだから。