みやこしあきこさんの『よるのかえりみち』を読んだ。
遊び疲れたうさぎの男の子。お母さんに抱っこされて、家に帰っていく。
瞼が重たくなった男の子が見たもの。聞こえた音。
そこから感じられる想像の世界。
明かりの灯っている部屋。暗い部屋。そこでみんな何をしているのかな。
いつもの夜を過ごしている人も、特別な夜を過ごしている人も、みんな、みんな、おやすみなさい。
ひとことで表すと「とても眠くなる本」だと思う。
子どもが自ら好んで読むかは別として、落ち着いた、静かな気持ちになれる絵本であることは間違いがない。みやこしさんらしい赤や黄色の使い方が絵をさらにグッと際立たせている。
うさぎの男の子のように、想像を膨らませることはおそらく誰しもが経験しているはず。
私は夜道を歩いていて明かりが灯っていたり、笑い声が聞こえたりすると「何をしているのだろう」と勝手に想像したりする。駅ですれ違った人が寂しそうな顔であったならば「何があったのだろう」と考えたりする。
その人は、私とすれ違った人、長い年月の一時だけかすった人、その場限りで忘れてしまう人であろうに、それでもなぜか想像してしまうのだ。
生きている年月なんて長命な人でも100年ちょっと。そんな短い間では「今」を生きている人のほとんどは私と巡り会うことはない。
私の知らないところで、それぞれの「今」があり、泣いている人も笑っている人もいると思うと、当たり前なのに、なぜか、不思議な感じがするのだ。
この絵本はぐっすり眠りたい夜に読んでもらいたい。
心の中の雑音が一度、リセットされて心地よく眠れるのではないかと思う。
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この絵本を読んで、以前に書いたこちらの記事を思い出した。