私は寒さには強い方なのかもしれない。皆がさむいさむいと首をできるだけ衣服の中へ引っ込めているとき、首を伸ばして前を見つめる。
私は汗っかきなのでどちらかと言うと夏が苦手だ。
あと、夏は私には眩しすぎる。
朝、車のフロントガラスが霜でがちがちだったので、霜取りスプレーをかけて車に乗り込んだ。霜取りスプレーは便利だが、霜がしつこいとたくさん使ってしまうのがなんだかもったいない。それでも短時間で車を始動出来るのはとても助かる。
会社に到着すると掃除を始める。数年前に数ヶ月休職し、新たに働き始めてからずっとトイレ掃除をしている。何かが変わるわけでもないのだが、トイレを掃除しているとあの頃のしんどさがじわりと手のひらから身体中に入り込んでくる。心の片隅で思いだし、心の大半で今日も生きなくちゃと思う。
あなたの苦しみと私の苦しみは比較対象ではなく、あなたの苦しみがわからない代わりにあなたも私の苦しみを知ることはない。そうやって少しだけ触れながら、ほんのり支えながら、人々はゆらゆら前に進んでいる。
がんがんに突っ走っている人がいたら、私はその人の袖を引っ張ってしまうかもしれない。
「ちょっと、ゆっくり歩こうか」
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大白小蟹さんの『うみべのストーブ』を読んだ。ずっと気になっていたのだが買い忘れていて、先日行った「とほん」さんの棚で発見したのでやっと手に入れた。
なんて含みのあるお話たちだろう。
読み終えたとき「無」がやってくるようだった。感情は確かに生まれているのだが、濁らない澄んだ色をしている気がした。
とても好きだった。
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