滋賀県立美術館で開催されている川内倫子さん『M/E 球体の上 無限の連なり』へ行った。
とてもとても素晴らしかった。
写真から、そのときの空気と温度が伝わってきて、柔らかくなったり、痛々しく思えたりした。
人は同じ景色を眺めていても、同じものが見えている訳ではないとわかっていたが、写真を通して見えたものは新しい輝きだった。
写真だけでなく映像作品も素晴らしく、時を忘れてずっと見つめていた。
私は日々、何を見て過ごしているのだろうと思う。
視覚を与えられているからこそ得られる感情にもう少し敏感になっても良いのではないかと感じた。
私はどちらかと言うと、写真よりも文章を書くことを好んでいるのだが、時々、私が書いた文章を読んだ知人などから「同じ場所にいたのに、見えているものが全然違う」と言われることがある。
それは不思議なことではない。むしろ同じものが見えている方が珍しいと言うか奇跡的なのではないだろうか。
人はその日に抱いていた感情や興味によって、視覚で捉えたものの中から自分に取って必要な情報を選び取っているのだと思う。よって、家族であっても異なる日常を過ごしている以上、見えるものは違う。
自分だけでは見えなかったものが、写真や文章から得られるなんて、楽しくてしかたない。
今回は娘が受験を終えたため、家族三人でのお出かけだった。
とは言っても、この展覧会を観たのは私だけで、娘は敷地内にある県立図書館へ。息子は併設のカフェへでゆっくり過ごしたりしたらしい。三者三様の過ごし方が実にわたし達らしいと思う。
お互いの好きなものを尊重し、敬意を払い、邪魔をしない。
心に留めておくと、少しだけやさしくなれる気がするのだ。
カナタ / baobab + haruka nakamura MV by 川内倫子 - YouTube