バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

ひとりでしか見えない景色

少し遅めの起床。これから出かける予定があるのだが、まだ寝ている子ども達用におにぎりを握る。かつて「自分のことだけを考えればいい」という日があったことを忘れ始めている。起きたらごはん、起きたら洗濯、常に生活を共にしている者のことが頭をよぎる。

それは何かに熱中していて遊んでいても、だ。

ふと力が抜けた瞬間、できるだけ早く帰ろうと思ってしまう自分がやや寂しく感じたことがある。もしかしたら、あのとき一緒に遊んでいた人は私の心内を読んでしまったかもしれない。私の寂しいの意味は多くの意味を含んでいて上手く言葉にできない。

ただ、決してあなたと一緒にいる時間が寂しかったわけではない。

***

松阪へ舞台を観に行った。

主だった内容は終活詐欺だったのだが、押しつけがましくなかったので楽しく鑑賞できた。私より歳が上の方々が生き生きと演じているさまに、これから私が歩む道の道標を頂いたようだった。
観劇後、街を散歩した。ひとりで歩き回るのが好きなのだ。誰かとともに歩くのももちろん好きなのだが、ひとりでしか見えない景色がある。例えば、人懐っこい白い猫を撫でながら写真を撮っているカップルとか、道端に大きな荷物を降ろし片手をバッグに突っ込んでずっと何かを探している人とか、誰かと話をしながら歩いていたら気にも留めないような景色がそこら中に落ちている。

f:id:bambi_eco1020:20231204200402j:image

駅の方まで歩き、来た道を戻る。先ほど猫を撮っていたカップルがおまんじゅうを買い、その横のベンチに腰掛けて食べていた。ふわふわとした空気が流れていてなんだか羨ましかった。

さらに歩いていたらパン屋さんがあった。入ろうか迷い、立ち止まった。するとガラリと戸が開き、顔見知りの方が出てきた。ここのパン屋さん、美味しいですよと言われ、いくつかパンを購入した。

f:id:bambi_eco1020:20231204200610j:image

気になった雑貨屋さんへ寄ったあと、坂を上った。だいぶ歩いたあとなのでちょっとだけしんどかったけれど、黄色いイチョウで覆われた道は美しかった。目線をあげると寒そうな木があった。もう12月だった。

f:id:bambi_eco1020:20231204200531j:image

車に戻り、移動した。

写真展を開催しているギャラリーへ行く途中、草が光を集めていた。先ほど、寒々しい木を眺めたあとだったので眩しくて仕方なかった。何かを与え、何かを欲し、いずれ朽ちていく。その過程を問われることはないのかも知れないが、私が見たものだけは覚えておこうと思う。

f:id:bambi_eco1020:20231204195537j:image

 


f:id:bambi_eco1020:20231204221351j:image

写真展は写真家の知人らしき方々が多くいらっしゃって、少々場違いな気もしたが、ひとつひとつ写真を眺めていたらそんなことも忘れていた。


f:id:bambi_eco1020:20231204221401j:image

私が街中を歩くときに目を留めそうな被写体が多くて面白いと感じたところで、ある写真に気がついた。写真に映されていたその被写体を私も6月にスマホで撮っていたのだ。思わず、写真家に私のスマホを見せながら話しかけてしまった。「シルエットだけで何かわかるのが面白くて撮りました」と話してくれた写真家に「私もそう思って撮りました」と答えた。私となんの接点もないひとが、ひとつの被写体で同じことを感じていたことが嬉しかった。何より、私が「ひとりでしか見えない景色」と思っていたものが実はそうではないと感じられたことが嬉しかった。