視界が霞んで、先が見えなくなった時。
以前はなるべく早くそこから逃げ出そうと思っていた。
明るい方向はどっちだろう?ずっとつながっている道はどこだろう?四方を見渡し、出口を探した。
その昔、私が小学生だった時に巨大迷路が流行ったことがある。
少し遠いけど自転車でなら行けるぐらいの場所に巨大迷路ができたのを聞き、私達は大はしゃぎだった。「よし、みんなで行こう!」誰かが言ったその掛け声にはいはい!と手を挙げた10人は、自転車で列を作り、ペダルを一生懸命こいで巨大迷路へ向かった。
途中、テルちゃんの自転車がパンクすると言うアクシデントがあったものの、わりと近くに自転車屋さんがあったため、なんとかクリア。時間にロスが出たので先を急ごうとみんな必死にペダルをこいだ。ヘトヘトになりながらなんとか巨大迷路に到着した私達は初めて見る巨大迷路にテンションが上がり、先ほどまでの疲れも忘れ、すぐに2~3人のチームに分かれ迷路の中へ迷い込んだのだった。
こっちかな?いやいや、あっちだよ。そう、口々に言いながら迷路の中を走って進んでいたのだけれど、すぐにそびえる壁が出現し、私達にそこが行き止まりであることを告げるのだ。外から見たらそんなに広くない、なんてことのない迷路のように感じたのに、いざ中に入ってみるとここから脱出するのはそう簡単ではないとだんだんわかってきた。
一瞬、「出られなかったらどうしよう?」と思った。
今だったら「どうにでもなるよ」と簡単に片付けるところだが、小学生だった私はたかだか何回か壁にぶち当たっただけでそんな不安に襲われたのだ。
そんなことを思っている時に「あ、あそこに見晴し台があるよ」とトモちゃんが指を差しながらそう言った。トモちゃんの指の先には確かに見晴し台のようなものが見えた。とりあえずあそこに登ろう!と私達は見晴し台に続く階段にたどり着くことを目標にし、迷路の中を駆けずり回った。何回そびえる壁を見た後だっただろう。急に視界が開けたようにふっと階段が出現したのだ。あ、これだ、これを登れば見晴し台だ!私は興奮しながら階段をトントンと駆け上がった。
見晴し台にたどり着くと、私は大きく息を吸ってから迷路全体を見渡した。
高いところから見えた巨大迷路は、なんでさっきまであんなに迷っていたのだろう?と思えるほど単純な造りになっていた。
「フフフ」
なんだか可笑しくなってきてみんなでアハハと笑った。
せっかく見晴し台にいるのだからと、ゴールまでのおおまかな道を覚えてから見晴し台を降りた。すると今度はほとんどそびえる壁にぶちあたらずにゴールまでたどり着くことが出来たのだった。
初めて挑戦した巨大迷路は楽しかった。
不安も恐怖も爽やかな風も視界が開けた瞬間も感じられたのだから。
今も迷いがあったり、出口がないと思った時に巨大迷路を思い出すことがある。
迷ったら視点を変える。気分を変える。
闇雲に突っ走ってもいずれ階段にたどり着くかもしれないが、ものすごく体が消耗する。元気な時はそれで乗り切れるのかもしれないけれど覚悟が必要だとは思う。
まあ、そうは言ってもなかなか難しいし、わかっちゃいるけど〜と思うからさ、今日はとりあえずコーヒーを一杯飲んで目を瞑って、楽しい妄想してから眠ることにするわ☆
- 作者: ふくだとしお
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